スーパーの鮮魚部門で、毎日一番頭を悩ませるのがこの「荒利(粗利)」の問題ですよね。
「店長やバイヤーから毎日『荒利、荒利』と言われるけれど、どうコントロールすればいいか分からない……」と負担に感じていませんか?
実は、荒利の管理はコツさえ掴めば決して難しくありません。
ぶっちゃけると、売上を伸ばすよりもずっと楽に改善できます。
なぜなら、
売上は競合店の動きや天候、突発的な事件など「自分ではどうにもできない客観的な要因」に左右されるのに対して、荒利は「自分たちの売場づくりと調整次第でほぼ100%コントロールできるもの」
だからです。
つまり、仕組みを理解して毎日の調整をしっかりやれば、すぐに結果が数字になって返ってきます。ここが分かると、利益管理は一気に面白くなります!
ただ、現場の忙しさやちょっとした手落ちなど、「何らかの理由」でこの調整が狂ってしまうから、荒利が悪化してしまうのです。
※この「何らかの理由」というのが一番の曲者なので、後ほど現場でよくある具体例をたくさん紹介します。
答えはいつも、自分たちが毎日立っている「現場の売場」にしかありません。
答えはすべて現場・売場にあり
本部のデータだけを見て現場のリアルな動きを知らない指示に振り回される必要はありません。自分たちで売場をしっかり管理して、会社をあっと言わせる数字を作っていきましょう。
今回は、鮮魚部門の現場において「何が原因で荒利が落ちてしまうのか」、その具体的な要素と対策を詳しく見ていきたいと思います。
そもそも「荒利」の構造をサクッとおさらい
まずは、私たちが日々追いかける荒利の基本を整理しておきましょう。
荒利とは、私たちが汗を流して商売をして稼ぎ出した金額のことです。
売上高から仕入原価(売上原価)を引いた金額で、「粗利」とも書きますよね。
これを金額(円)で捉えるときは荒利高、売上に対するパーセンテージ(%)で捉えるときは荒利率(値入れ率とは別物です)といいます。
会社によっては、GP(gross profit)、GPR(gross profit rate)と英語で呼ぶところもあります。
私たちが毎日のパック詰めやおろし作業、値付けを行う最終的な目的は、この「荒利高(金額)」をいくら残せるかにあります。
ここがめちゃくちゃ重要です。
注意!「率」ばかり追いかけると、売場も数字も死んでいく
どんな魚商いでも、最終目的は「荒利高(お金)」をしっかりと残すことです。
しかし、チェーンストアなど複数の店舗がある会社では、店の規模が違うため、どうしても本部から「荒利率(パーセント)」や「ロス率」だけで評価されがちになります。
確かに上層部からすれば「率」で比較する方が楽だからです。
ですが、チーフや担当者がこの「荒利率」ばかりを意識して営業してしまうと、恐ろしい結果を招きます。
上から「ロスを出すな!」「率を上げろ!」と詰められた結果、現場は何をし始めるでしょうか?
一番手っ取り早いのは、「品物を出さない」「夕方以降売場に並べない」という手段です。
商品を出さなければロスは出ない(=ロス率が下がり、荒利率が上がる)というわけです。
確かに、これをやると一時的・短期間だけは見かけの荒利率が良くなります。「今月はロスを出さずに乗り切った!」と店長に褒められたりして、やった感が出るかもしれません。
しかし、間違いなくその店の売上は下がっていきます。
「いつ行っても欲しい魚がない店」にお客さんは来なくなるからです。2〜3ヶ月後には売上が急落し、気づいたときには二進も三進も(にっちもさっちも)いかない状況に陥ります。
売上が下がれば、当然残る荒利高(金額)も下がります。これは全国の多くのスーパーがハマっている「負のループ」です。
「売上の中にこそ荒利がある」という意味を、私たちは現場のプロとしてよく理解しておかなければなりません。
詳しくは>>荒利率をあげようとすると売上高さらには荒利額が下がる理由 鮮魚の計数第7回
目先の「率」をクリアするためだけに商品を引っ込めるのではなく、しっかりと売って「荒利高」を残す推移を重視していきましょう。
自分たちの頑張りは「荒利高」で証明される
売場がうまくいっているかどうかの通信簿は、最終的に荒利高や荒利率の数字で下されます。
荒利が良くない(不振である)という場合は、「荒利高が下がっているケース」と、「荒利率が下がっているケース」の2通りがあります。
現場として一番避けたいのは、やはり「荒利高(手元に残る儲け)が下がること」です。
ちなみに、この2つは必ずしも同じ動きをしません。
たとえば、特売で少し荒利率を下げて安く売ったとしても、売上ボリュームが爆発的に伸びれば、結果として残る荒利高が予算や前年実績を大きく超えることがあります。これこそが正しい攻めの商売です。だからこそ、率だけに縛られず「高」を意識することが大切なのです。
荒利を下げる要因:仕組みはシンプル!
では、現場で荒利が下がってしまう原因は何でしょうか?
難しく考える必要はありません。荒利は「仕入れ」と「売上(製造量)」のバランスだけです。
仕入れが多すぎたか、あるいは売上(製造量)が少なくなったかのどちらかです。
つまり、日々の仕入金額と、売場に並べる「陳列量=製造量」のコントロールさえしっかりできれば、荒利は必ず良くなります。
ぶっちゃけ、ここを丁寧に見直すだけで現場の荒利問題の大半は解決します。
コップの水を溢れさせている(=ロスを出している)から無駄が出るわけです。注ぐ水の量をコントロール(=製造量を調整)すればいいだけ。すごく単純ですよね。
ただ、現場では日々いろいろなトラブルやうっかりミスが起こるのも事実です。上記の基本を押さえた上で、どこに利益が隠れて漏れてしまっているのか、幅広い原因を知っておくことがチーフや担当者としての「経験値」や「武器」になります。
現場で利益が漏れている原因チェックリスト
ここからは、私たちが日々の業務で「知らず知らずのうちに荒利を落としてしまいがちな事例」をジャンル別に挙げました。自分の売場やバックヤードで当てはまるものがないか、チェックしてみてください!
1. 売上・鮮度に起因するもの
1.売上高自体が下がっている ・・・ もともと荒利は売上の一部なので、売上自体が落ちると荒利高も下がります
2.お客さんからの「鮮度の信頼」がない ・・・ これが最大の原因。鮮度が悪いから売れず、さらに値引き廃棄が増える悪循環になります
2. 仕入・原価に起因するもの
3.相場高騰 ・・・ 市場の相場が上がって仕入原価が高くなったのに、売価を上げるのには限界がある場合
4.メーカー等の値上げ ・・・ 納品価格が上がったのに、定番の売価変更を忘れて据え置いている場合
3. 設備・温度管理に起因するもの
5.売場ショーケースの温度異常 ・・・ 温度が上がってしまい、商品をまとめて廃棄せざるを得なくなる
6.バックヤードの冷蔵・冷凍庫の温度異常 ・・・ 冷えが悪く、ドリップが出たり色変わりして低値入で売り切る、または一部廃棄になる
4. 商品化・パックの仕上がりに起因するもの
7.商品の破損 ・・・ 高額なウニのパックや刺身盛り合わせを落としたり、潰したりしてしまう破損ロス
8.商品の状態が悪い ・・・ 盛り付けが傾いて刺身が偏っている、ドリップが出まくっている
9.パックが下手 ・・・ ラップがシワシワで見栄えが悪かったり、濡れて湿っていたりしてお客さんが手を伸ばさない
5. 売場管理・見切りに起因するもの
10.商品の出し過ぎ ・・・ 過去のデータや天候を無視して、刺身や魚惣菜を作りすぎてしまう
11.万引き ・・・ 高級な切身や刺身などの不明ロス
12.見切り・値引きのし忘れ ・・・ タイミングを逃して売場に放置され、結局最後は廃棄になる深刻なケース
13.子供のいたずら ・・・ 売場のパックのラップに指で穴を開けられて商品化し直しになる
14.見切り品だらけの売場 ・・・ 定価の商品が少なく見切りシールばかりだと、売場全体の鮮度感がなくなり定価で買われなくなります
6. 調理技術・加工に起因するもの
15.歩留まり(ぶどまり)の悪さ ・・・ 魚のおろし方が下手で骨に身がたくさん残っている、刺身の引き方が雑で形が不揃い
16.トリミングのしすぎ ・・・ 血合いや皮、小骨を取る際に、必要以上に身まで削り落として捨てている
17.規格の間違い ・・・ 本来「4切」のパックなのに間違えて「5切」入れてしまい、継続的に安く売ってしまっていた
18.商品としてのクオリティ不足 ・・・ 盛り付けや切り方が下手すぎて、商品としてお客さんに選ばれない
19.付加価値のある商品作りができない ・・・ 技術不足でワンランク上の盛り合わせや厚切り提案ができず、安い商品ばかり作ってしまう
7. 伝票・数値処理に起因するもの
20.現物がないのに伝票だけ起票 ・・・ 伝票には載っているのに、実際の品物がバックヤードに入ってきていないことに気づかない
21.二重計上 ・・・ 同じ納品に対して、2枚の伝票が処理されて原価が倍になっている
22.値引き伝票(赤伝)の起票漏れ ・・・ 取引先からの補償や値引きの伝票処理を手落ちで忘れている
23.経費伝票の起票忘れ ・・・ 消耗品などの処理ミス。現場で非常に多いパターンです
8. 販売方法・値付けに起因するもの
24.単純な値付け間違い ・・・ 580円の商品のラベルを、うっかり58円で発行して売場に出してしまうようなミス
25.売価設定が高すぎる ・・・ 欲張って売れない価格をつけることで、結果的に夕方に見切りだらけになり廃棄が増える
26.売価計算の間違い ・・・ 入数の数え間違い、伝票の見間違いによるうっかりミス
27.バンドル販売(まとめ買い)の連発 ・・・ 原価や値入れを計算せず、とりあえず「3パック1,000円」などを刺身で連発して利益を削ってしまう
28.特売設定の垂れ流し ・・・ 特売期間が終わっているのに、マスターやPOPの設定を戻し忘れて通常日も安く売り続けてしまうケース(非常によくあります)
9. 棚卸(たなおろし)に起因すること
29.棚卸漏れ ・・・ バックヤードの奥や冷凍庫の商品のカウント漏れ
30.過少計上 ・・・ 実際の在庫よりも少なく数えてしまう
31.期首の過大計上 ・・・ 前月末のカウント時に単位(ケースとパックなど)を間違えて多く計上し、当月の原価が膨らんでしまうケース
10. 売場スタッフ・運用の管理
32.チームの技術・スピード不足 ・・・ スピードが遅くピーク時に商品が並ばない、または技術不足で商品ロスが出る
33.指示・目的の共有不足 ・・・ 「今日はこれを売り切る」「この規格で作る」というチーフの意思がパートさんに伝わっておらず、バラバラに作業してしまう
34.廃棄商品のずさんな管理 ・・・ 廃棄するものの数を正しくカウントせず、処理が適当になっている
11. 店舗全体の運用・ミス
35.定休日前の売り尽くし ・・・ 定休日前日に焦って極端な値引きをしてしまい、荒利を飛ばす
36.レジの打ち間違い ・・・ レジでの部門キーの押し間違いや、手打ち時のミスで他部門に売上が流れてしまう
37.バイヤーの部門登録間違い ・・・ 新商品のコードが別の部門(惣菜や精肉など)で登録されていて、いくら売っても鮮魚の売上・荒利にならないケース
いかがでしょうか? 「あ、これ昨日やってたかも……」という心当たりはありませんか? これらすべてが、現場から荒利を少しずつ目減りさせていく原因になります。
「荒利を上げられない」現場の空気にも注目しよう
今までは「荒利を下げる原因(ミスやトラブル)」を見てきましたが、もう一歩ステップアップするために、**「なぜ、あと一歩の荒利を上げられないのか」**という売場の雰囲気や運用の問題にも目を向けてみましょう。
- 数字に苦手意識がある ・・・ 「なんとなく」の勘だけで毎日発注や製造をしてしまっている
- マージンミックスを活用できていない ・・・ 儲かる商品(高値入)と集客用の商品(低値入)のバランスを考えず、一律の価格設定にしている
- 自店のAランク商品を把握していない ・・・ 「これを出せば利益が出る」という看板商品をチーフが把握できていない
- 現場がサラリーマン化している ・・・ 「たくさん売れて忙しくなるのは面倒くさいから、そこそこでいいや」と売場が守りに入っている
- 職人としての欲がない ・・・ 「もっと綺麗に引いて高く売ってやろう」という工夫を忘れてしまっている
これらは直接的なミスではありませんが、売場全体の「稼ぐ力」をジワジワと奪っていきます。逆に言えば、ここを少し意識するだけで、現場の荒利は劇的に上向くポテンシャルを秘めています。
荒利が悪いときに現場ができる最強の対策
「じゃあ、荒利が落ち込んでいるときは具体的にどう動けばいいの?」
現場のチーフや担当者がやるべき対策は、ズバリこれだけです。
「差益管理(売場の健康状態の把握)」を徹底すること
差益管理と言うと難しく聞こえますが、要するに**「自分たちの売場の健康状態を毎日ちゃんと見よう」**ということです。
仕入れが多すぎるなら発注を削ればいいし、夕方のロスが多いなら朝・昼・夕の製造量を細かく分ければいい。これらを「なんとなく」ではなく、数字に基づいて微調整していくのが現場のプロの仕事です。
具体的な考え方や商売のコツについては、ぜひこの記事もセットで読んでみてください。
>>「売上は努力、利益は知恵」の意味【魚商いの心得】〜第6回 〜さかなのさ
そのためには、毎日の差益表(予定荒利の計算)の精度を高めたり、数字が悪い月は「中間棚卸」をしっかりやって、いま自部門がどれくらい儲かっているのかをリアルタイムで把握することが大切です。
最近は残業時間の兼ね合いもあるので無理は禁物ですが、数字が悪いときほど、早めに原因を突き止めて当月中に対策を打つ。このサイクルを自分たちの手で回せるようになると、店長や本部から文句を言われる筋合いはなくなります!
まとめ:自分たちの腕と工夫で、しっかり残せる売場を作ろう
今回は、鮮魚部門の現場で起こりがちな「荒利を落とす原因」をたっぷりと挙げてみました。
これら無数の原因に気付き、一つずつ潰していくことこそが、結果として「しっかり利益が残る強い売場」を作ることにつながります。
本部から「あれこれ言われるからやる」のではなく、自分たちが気持ちよく、誇りを持って魚を売り、その頑張りに見合った正当な利益を残すために、まずは今日の売場のチェックから始めてみませんか?
現場で使える具体的な計数管理や、売場づくりのアイデアはこれからもどんどん追加していきます。みんなで強い鮮魚部門を作っていきましょう!
<終わり>

